師走の蛙とは、「寒ガエル」をもじった古くより伝わる大阪しゃれ言葉。学校に通い出してから医師になっての勤務先まで、北大阪から一歩も出たことがない私、井の中の蛙の独り言です。診療の合間、日々の雑感を(医療に関係ないこともふくめて)綴っていきます。
後期高齢者医療制度がこの4月より採用されました。若壮年者と比べたら、お年寄りに医療費がかかるのはあたりまえです。基本的な考え方は高齢者の医療にはコストがかかるので、それを別枠にして高齢者にも医療に対するコスト意識をもってもらおう、ということです。
ところが評判は散々です。いわく年寄りを虐めるのか、負担が増えた、などなど。たしかにこの制度は細部にわたって不備はたくさんあります。野党はこれを政争の具とし、それに乗っかったマスコミも批判を繰り返しました。衆議院解散、選挙が近くなるのでは、という憶測から、与党からもこの制度を批判する声が大きくなってきました。
現実に景気が悪くなっている雰囲気が新聞等に蔓延してきました。年金に対する不信感もあいまり、収入の限られたお年寄りにはすこしでも支出を減らそう、という意識が芽生えてきます。医療費は食費とともに削るべきではないのでしょうが、毎日飲まないといけない薬を一日おきに飲んだりする人も出てきました。内科の先生に先日お話を聞くと、「患者さんの数が3年前の半分や」とぼやいていました。
ただ、やはり旧来の制度で保険がたちゆかなくなるのは明らかです。医療費が年々増えているのは、一番の原因が高齢化社会にあるのは間違いありません。また、医療そのものが高度化して先進治療にお金がかかっている、という側面もあります。結局はその「間違いなく増えていく医療費」を誰が負担するか、という話なのですが。
テレビでも年配の人が「いっしょうけんめい生きてきて、今になって医療費が増えるのはけしからん」といっていました。しかし、増え続ける医療費に対応するには、残念ながらお年寄りにもそれなりの負担増をお願いするのは仕方ないでしょう。いま高齢者医療を支えている若者たちも含めた納税者が、いざ高齢者になるときにどれだけ負担が重くなるか、考えなければならないと思います。保険や年金は相互補助と言われますが、これはなにも「若者が高齢者をおもんばかること」だけではないのです。