当院の外来でよく受ける質問についてまとめてみました。該当する質問について、下のQをクリックしてください。
なお、「肛門外来はどんな診察をするのか」「肛門病の日帰り手術はどんな手順でするのか」については、私が考えていた以上にみなさん不安を感じられていたようです。右下の「じー太肛門科へ行く」「じー太手術場へ行く」をクリックしてください、パラパラ漫画風に解説をしてみました。
親子代々、古くからされている肛門科では自費診療でしているところもあります。「肛門科」と検索したウェブサイトで「保険診療」と明示していなければ、まず自費診療です。
自費診療の先生は自分の診療に自信を持ち、厚生労働省の決めた手術料では納得できないから自分で手術代をきめるわけです。
ただ、肛門科には自費診療でないとうけれないような先進的治療はほとんどありません。今後は混合診療といって、保険でできるところ、保険のきかないところ、混合して診療することがあたりまえになってくるでしょう。
自費診療では内痔核の手術で500.000円、といったところもありますが、この価格が高いか安いかきめるのはあなた自身です。いずれにしろ、治療法、治療費をよくきいた上で納得できる治療をうけましょう。(このページの先頭へ)
まずは患者さんの話をよく聞く(問診)ことに始まります。その後、左を下にして横になり、肛門周囲を指診します(施設により右をしたにしたり、仰向けで膝を抱える姿勢を好む先生もあります)。ついで肛門鏡で肛門内部から観察します。
これだけでも多くの肛門疾患は診断がつきますが、なお診断を確実にするために、血液検査や内視鏡検査、放射線検査などが必要になることもあります。
蛇足ですが一般論として、肛門疾患については大病院での診察は避けた方がいいかもしれません。厚生労働省の方針、医療機関の役割分担がすすんだため、癌治療に特化し、ほとんど肛門手術はしていない大病院も多くなっているからです。
また、大病院で手術することはあっても、その執刀医は研修医であることが多いのが問題です。肛門は非常にデリケートな場所ですので、手術に際して繊細な注意が必要になりますが 残念ながら大病院の消化器外科では「癌以外の手術は手術でない」と考えられている節があります。
肛門疾患はほとんどが良性疾患です。ですから手術しないと命に関わる、という病気ではないわけです。ただ毎日使う場所なので、痛みがあったり下着が汚れるのは不愉快ですし、生活の質を下げてしまうのは問題です。
程度の軽い内痔核、急性の裂肛はくすりだけで症状がなくなります。ふだんの生活で、肛門周りを清潔に保ち、排便を規則正しくすることで、多くの肛門疾患は手術しなくてすみます。ただし、痔瘻や慢性の裂肛、脱肛するような大きな内痔核は手術しないと治りません。
それよりも問題なのは、痔だと考えて大事な病気を見逃すことです。進行した直腸癌の患者は「出血は前からあったが、ずっと痔だと思っていました」と言われます。自己判断は禁物です、まずは熟練した肛門科医の診察を受けましょう。(このページの先頭へ)
いちばん一般的なのは、背中から細い針をさしておこなう腰椎麻酔(1)です。横になっておこなう低位腰椎麻酔と座っておこなうサドルブロック麻酔とがあります。麻酔効果が安定し必要十分なだけ、麻酔がかかります。日帰り手術でも、回復室があればこれがいちばんだと思います。
腰椎麻酔と同じように、仙骨部に細い針を刺しておこなう麻酔法が仙骨硬膜外麻酔(2)です。さきの腰椎麻酔よりも、浅いところへ多い麻酔薬を注入します。腰椎麻酔とくらべると技術的にややむずかしいこと、麻酔効果が安定しにくいこと、などが欠点ですが、麻酔が切れるのも早いので、特に日帰り手術では、このんで使われます。
肛門の周辺に直接に麻酔薬を皮下に注入する方法(3)もあります。単独では十分な麻酔効果をえることがむずかしく、簡単な手術しかできません。
これも単独で、肛門手術にもちいられることは少ないですが、点滴の中に麻酔薬をいれて静脈麻酔(4)をおこなうこともあります。最近になり、ききやすくさめやすい静脈麻酔薬の登場で、以前よりもよく使われるようになっています。
欧米では、肛門手術も麻酔ガスを使った全身麻酔(5)でおこなうところも少なくありません。先の静脈麻酔とおなじで、腰椎麻酔や仙骨硬膜外麻酔と併用してつかうことがあります。意識がなくなり呼吸や循環に影響が大きいので、体位によっては麻酔のリスクが上がり、また腰椎麻酔よりも医療費がずっと増えます。(このページの先頭へ)
麻酔をかけた後は手術をするための姿勢をとります。一般的に好まれるのは、手術代に腹這いになり、両足を下へ下げる体位(1)ジャックナイフ位です。両足は広げるときと閉じるときがあります。多くは術者は患者の横にたちます。特に女性の患者さんには、あとの砕石位より羞恥心が少ない姿勢です。一方で、静脈麻酔や全身麻酔など深い麻酔をかけにくいのが欠点です。
一方で両足を広げて高く持ち上げ、術者が股間に坐る形を砕石位といいます。患者が上向きなので、心臓や肺への影響が少ないの麻酔を深くかける際には、この方が安全です。また肛門がうっ血しやすい体位なので、痔が大きく見えやすいので手術しやすい、といった利点があります。どの体位になるかは術者の慣れの問題で、どちらが正解、ということはありません。
メスを入れる前には肛門周囲を消毒します。麻酔が十分に効いていれば消毒する時に、さわられている感じはわかりますが、冷たさを感じなくなります。手術中はほとんど痛みを感じることはありませんので安心してください。
肛門手術といえば、ひどく痛い手術というイメージがあるようですが、決してそうではありません。レーザー治療や冷凍療法などはほとんど痛みがない治療ですし、内痔核の根治手術でも今は技術や器械の進歩で痛みはずっと減っています。また、手術そのものも進歩し、昔とはすっかり手術法が変わってきています。
もちろん、肛門周りは神経の過敏なところですので、メスを入れたときには手術後もまったく痛みがない、というわけにはいきません。ただ、痛み止めの薬を定期的に飲みさえすればコントロールできる程度の痛み、と考えてください。(このページの先頭へ)
手術後すぐの合併症として、とくに腰椎麻酔では手術後に髄液減少にともなう頭痛(1)がでることがあります。当院では特殊なペンシルタイプの細い腰椎麻酔針をもちいており、これにより腰椎麻酔後頭痛は激減しました。また、腰椎麻酔や硬膜外麻酔で尿が一時的に出にくくなることがあります(2)。これらはいずれも一過性で、時間がたてば自然に治ってしまいます。
手術後の合併症としては、一番多いのは出血(3)です。肛門手術では、創部を完全に閉鎖しないため、手術後に排便時に紙に血が付いたりすることはよくあります。ほとんどは自然に止まってしまうような小出血ですが、非常にまれですが止血を要することがあります(熟練した医師がすれば数百例にひとり前後です、当院では2005~2009年で 約0.2%)。半導体レーザーなど、手術の技術が進歩したのも出血が減った一因です。
術後の創汚染に対しての処置が不十分だと創感染(4)がおきることがまれにあります。傷がはれて痛み、膿がつくことでわかります(30年前までよく行われていた内痔核の手術、ホワイトヘッド法では傷を完全に閉じていたために、よく感染がおこっていました)。
重症の痔瘻を手術し肛門括約筋を広い範囲で切断しなければならない時以外には、おしりが術後緩んだりすること(5)はまずありません。ただし、新しい治療法(自動吻合器をもちいたPPH法や新薬を用いた硬化療法ジオン注)については、長期予後が不明で、さまざまな合併症が報告されていますので、担当医によく説明を聞きましょう。
いずれにしろ、肛門手術も昔とくらべるとずいぶんと進歩し、合併症は激減しています。(このページの先頭へ)
入院することのメリットは、ふだんの生活から離れてゆっくり安静にできること、万一の合併症に対しての処置が比較的早くできることがあげられます。神経質な性格の人には日帰り手術は不向きかも知れません。また術後早期に通院する手間が省けます。
肛門手術で入院しなければならない理由として、A4で示した腰椎麻酔後頭痛症がありましたが、これは麻酔針の工夫によりほぼ解決しました。その他の合併症も治療法の進歩により激減している今、どうしても入院が必要になる肛門疾患としては、一部の複雑痔瘻などに限られてきました。
ただし、日帰り手術だからといっても、手術が簡略になるわけではありません。術後早い時期から激しい運動をしたり、お酒を飲んだり、は厳禁です。入院治療以上に生活上の注意が求められます。また、排便のコントロールや術後出血に充分に注意を払う必要があり、そのような疑いがあれば早め早めの受診が必要です。
お金と時間に十分なだけ余裕がある人は、日帰りでなく入院治療をまず考えてもいいと思います。肛門病で入院が必要かどうか、はつまり特殊な病状でなければ、最終的に決めるのは患者さん自身といってもいいでしょう。(このページの先頭へ)
当院での日帰り手術の実際については、ナビ(ページ右上)より「日帰り手術」を参照してください。
日帰り手術の一番のメリットは、逆説的にふだんの生活から離れずにすむこと。家庭の事情でゆっくりと入院できない人には、通院で手術できることは大きなメリットです。
また、医療費が大いに節減できること、たとえば平成23年初頭では大病院に入院すれば、手術代、薬代、検査代は別で、一日あたり20000円弱の入院治療費が必要です(通常はこのうち3割が自己負担)。部屋代は保険外ですから個室等に入院すれば、さらに負担はふえます。
欧米では医療費が日本よりも高いこともあり、肛門手術は長くても一日入院(day surgery)があたりまえです。日本でも近い将来、「肛門手術は日帰りがふつう」の時代がくると思われます。(このページの先頭へ)
このような症状があるときは、大腸癌やポリープなどの腫瘍性疾患や、大腸炎などの炎症性疾患の可能性があります。早期に発見し治療するために、内視鏡検査をおすすめします。
胃の検査でもそうなのですが、バリウムを使ったレントゲン検査(注腸検査)はあまり行われなくなってきています。直接病変を観察できる大腸内視鏡が一般的になり、その経験を積んだ消化器内視鏡医が増えてきた今、あえて影を見つめる検査であるバリウム検査を勉強しよう、という医師が減ってきています。
かりにバリウムで異常があれば結局は内視鏡をすることになり、時間のロスがあること、また内視鏡ならば検査するときに疑わしい病変があれば、直接組織をとったり、場合により病変を切除することで、検査とかねて治療もできる、という点が内視鏡検査の大きなメリットです。(このページの先頭へ)
大腸ポリープが胃ポリープと違いは、腺腫など現在は良性でも、将来癌に変わりやすいタイプのポリープが多いことです。大きなポリープほど癌の合併が多いので、少なくとも5mmを超える大きさの腺腫は切除すべきでしょう。
逆に小さな腺腫や、過形成性や炎症性の明らかな良性ポリープは急いで切除する必要はありません。(このページの先頭へ)
大腸の病気の8割はS状結腸と直腸にできます。この病気の好発部位のみを観察するときは、浣腸だけでかなりのところまでは観察できます。しかし、大腸全部を観察するためには、それなりの準備が必要になります。
今、いちばんよく用いられている前処置は、検査の前日に下剤を服用し、検査当日に朝から腸管洗浄剤を服用する方法です。2リットルに薄めた洗浄剤で腸管を洗い流し、あわせて腸の滑りをよくすることで内視鏡がはいりやすくなります。
この方法が開発されてから、腸の前処置が簡単となり検査も簡単になりました。薬の味も改良され、甘いレモン味がついて以前よりも飲みやすくなってきました。
ただし、内視鏡医にとり、大腸は胃よりもずっと習熟を要します。ですから、患者さんの腸の状態(以前に開腹手術を受けているかどうか、腸の固定がよいかどうか、など)でも違ってきますが、内視鏡初心者にあたると、正直大変です。
初心者はどうしても内視鏡を奥へ急いでいれようとするあまり、腸の中へ空気を送りすぎてムダに腸をのばしてしまいます(1)。経験をつめば、送気量をできるだけ減らして腸をのばすことなく、「内視鏡で腸をおりたたむようにして」観察します(2)。
かくいう私も(7000例超の内視鏡経験がありますが)スムースに盲腸まで内視鏡をすすめるには300人ほどの患者さんに苦労をかけたと思います。特に研修医のいるような大病院では熟練した医師を選びましょう。(このページの先頭へ)
とりわけネットの世界では玉石混淆、いろいろな情報が溢れていてお悩みだと思います。専門家の目からみて、なかには正直にいいまして肛門科を名乗るのが不思議なクリニックもあります。これだけは押さえておくべき、というポイントを記します。
肛門科はもちろん、外科領域の疾患です。病院では、内科系の診療科ではまず痔の治療を行うことはありません。ですからスタッフの先生に外科系の医師がいない大腸肛門科は避けるべきでしょう。サイトで手術治療について触れていないクリニックは、基本的に「手術ができない肛門科」の可能性があります。
また、肛門疾患の症状の一つに排便時の出血があります。この場合、出血の色や量では大腸の病気との鑑別がつきません。大腸内視鏡検査を行っていない肛門科を受診する場合は、「大腸癌の可能性はまったくないのか」は必ず確認しましょう。大腸内視鏡検査は、今や大腸肛門病を診る上で臨床医に必須の検査です。
自費診療かどうか、は判断の目安にならないことは、先に述べたとおりです。自費診療されている先生方にも素晴らしい先生はいらっしゃいます、誤解なさらないよう。(このページの先頭へ)