師走の蛙とは、「寒ガエル」をもじった古くより伝わる大阪しゃれ言葉。学校に通い出してから医師になっての勤務先まで、北大阪から一歩も出たことがない私、井の中の蛙の独り言です。診療の合間、日々の雑感を(医療に関係ないこともふくめて)綴っていきます。
先週の土曜日午後、生國魂神社へ行ってきました。といって不信心ですが、お参りしに行ったわけではありません。年に一度、上方落語協会が主催する彦八祭りを見に行ったのです。
大阪は笑いの町、といわれ、私が子供の時分でも漫才、新喜劇は毎日のように放送されていました。しかし、テレビで上方落語を聴く機会はほとんどありませんでした。落語をきくようになったのは大学に入ってからで、友人の落語ファン、臼井先生の影響です。
落語会は平日の夜に開かれることが多いので、開業医となった今はなかなか落語をききにいく時間ができません。もっぱらCDやDVDでの観賞となってました。生の落語を聴くのはたぶん5年ぶりくらいだったでしょう。この秋に米團治を襲名する桂小米朝さんのプレ襲名披露ということで、兄弟子のざこばさんたちが高座に上がりました。ちょっとした大広間に300名は入ってたでしょうか、まずは前座をつとめた桂吉の丞さんが「ようさんのお運びありがとうございます。ぱっと見渡しても明らかに消防法違反ですね」と枕を振って笑いをとっていました。
しばしの間、お腹を抱えて大笑いしました。「笑う門には福来たる」といいまして、笑うことは健康につながる、と昔から知られています。なぜ笑いが体によいか、というと、故桂枝雀さんは「上を向いて大きな腹式呼吸をするから体によいのだ」と言ってました。実際に医学的な見地からこれを実証しようという実験もおこなわれており、大笑いをした後では免疫力があがる、という報告もされています。
患者さんにいい気持ちで帰ってもらおう、という意味では、町医者も見習うべき点も多いかも知れません。でしたら病院でもできるだけ患者さんが笑えるような環境を整えればよいか、となりますが、現実にはなかなか難しいです。もともと患者さんは体の調子が悪くて病院にきてるわけですから、初診の方にいきなり冗談をいってもその人の人間が見えていないと、「この医者はいっぺん医者にかかった方がええんちゃうか?」というような話にもなりかねません。人によってはユーモアととらえてくれるような話を聞いても、他の人には腹立たしく聞こえることもあるわけです。
私などは、まだ手術や検査に時間をとられますが、内科の先生などその仕事の大部分が患者さんとの会話になります。じっと人の心を見つめる難しさはどんなお仕事にも共通するでしょうね。