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大腸癌2 大腸癌の症状と診断

本文中の図の解説方法
  1. 癌か痔か
  2. 右側大腸がん 症状
  3. 左側大腸がん 症状
  4. 便潜血反応
  5. 大腸内視鏡検査
  6. 注腸検査
  7. 画像診断 大腸癌
  8. CT
  9. MRI
  10. PET

症状

多くの大腸癌はゆっくり進行し、症状が出るまでに時間がかかります。また、「この症状が出れば間違いなく大腸癌」という症状もなく、痔疾患など良性疾患とよく似た症状をきたします(図1マウス)。

病気がすすめば、貧血や疲労感が出ます。腸にともなう消化器症状は、右側(大腸の始まりの方)と左側(大腸の終わりの方)で違っています。

右側大腸癌

最近は日本でもすこしずつ、右側大腸癌もふえてきました(図2マウス)。大腸の右側は腸の幅も広く、まだ内容物にじゅうぶん水分が残っていますので、少し腸がせまくなっても普通に通過します。ですから、腸がつまることによる症状、吐き気や腹痛がでにくいのです。

肛門からの距離も遠いので、目にあきらかな血便はなく、便潜血検査でないと検出できません。腫瘍がかなり大きくなり、しこりがお腹の上から触れるようになってはじめて病院に来る方もあります。

左側大腸癌

大腸癌はその70%がS状結腸と直腸にできます(図3マウス)。大腸の左までくれば、腸内容物は水分が吸収されてきて、かなり固形になっています。また、右側とくらべると、腸の幅もすこし細くなっていますので、腫瘍が大きくなると腸閉塞の症状が出ます。つまり、吐き気や腹痛(周期的)とともに、下痢と便秘をくり返したり、便が細くなりおならが少なくなります。

また、肛門からの距離が近いので、血便に早くから気づくことも多いのです。癌からの出血は赤黒い便が多く、肛門疾患よりの出血は真っ赤です(ただし、直腸癌では真っ赤な出血もあります)。

診断

上記の症状から、大腸癌を疑うときにする検査について説明します。

血液検査

現在のところ血液検査だけで大腸癌を早期診断する手だてはありません。腫瘍マーカーとしてCEA,CA19-9などがありますが、これらは大腸癌が進行しないとあがりません。むしろ、大腸癌がどれだけ進んでいるか、手術後に大腸癌の再発がないかどうか、の判断の目安として考えられています。

将来の展望としては、血液検査などで大腸癌にかかりやすいかどうか、を判定できるようになるでしょう。ただし、昨今の医療情勢を考えれば、保険適応となって万人が享受できるかどうか、は疑問です。

便潜血反応検査

今はヒトのヘモグロビンを選択的に検出する検査が主ですので、むかしのような食事制限はしません。便の中に血が混じっていれば、口から肛門までのどこかで出血しています。

口から胃までの部位での出血は、量がすくなければ胃液で分解されるので、通常は陰性になります。小腸は出血するような病気が、ふつう少ない個所です。ですから、便潜血陽性は、大腸肛門病をまず疑います(図4マウス)。

ただし、用心しなければならないのは、検査の精度が決して優れておらず、大きな大腸癌があってもマイナスになることがあります。はっきりと大腸癌が疑わしい症状があったときは、便検査よりもつぎの内視鏡検査が必要です。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡の実際については、こちらを参照してください。検査前に重要なのは、腸閉塞の危険がないかどうか、です。

腹部を触診し、おなかのレントゲン写真で腸閉塞の危険性がある、と思われたときは、浣腸だけの前処置で内視鏡をおこないます。それ以外では、腸管洗浄液を服用して腸を空っぽにしてから検査をします。合併する大腸ポリープは、できるだけ検査時に切除します。

内視鏡で大腸に腫瘍があれば組織を採取し、顕微鏡検査により確定診断になります(図5マウス)。内視鏡で切除できるかどうか、判断に迷うときは超音波内視鏡をおこなうこともあります。

レントゲン検査

注腸検査

おしりからバリウムと空気を送りこんで影を見る注腸検査(図6マウス)が行われます。大腸癌の部位や大きさを確認するために今でも手術前に用いられますが、大腸内視鏡の進歩により、現在ではあくまで補完的な検査となっています。

CT検査

CT検査は大腸癌の周辺臓器への拡がり、リンパ節や肝臓、肺への転移の有無をみるために必須です(図7マウス,8マウス)。また、最近のトピックスとして、CT診断能の進歩により、レントゲンをもちいて擬似的に内視鏡像をえがくことも試みられています。狭窄部の口側に腫瘍があるかどうか、の判断の助けになります。

ただし、「内視鏡とちがい、術者の巧拙がないので楽な検査だ」と喧伝するむきもありますが、内視鏡にとってかわるものとはなりえないでしょう。なぜなら、放射線の被曝の問題もあり、かりに腫瘍があることがわかっても、最終的には内視鏡で組織をとって確認しなければならないからです。

核磁気共鳴検査(MRI)

周辺臓器への浸潤(しんじゅん=かみこんでいくこと)を見る上で役に立ちます。とりわけ、進行直腸癌では周囲の膀胱、子宮、膣、前立腺、精のうなどを合併切除しなければならないこともあり、術前に検査する必要があります(図7マウス,9マウス)。当初とくらべると、画像もぐっと鮮明になり、検査精度があがりました。

ポジトロン断層撮影検査(PET)

陽電子を放出する同位元素で標識した薬剤を注射し、その体内分布を測定する検査です。腫瘍の悪性度の判定にも役立つ、と考えられますが、ぼんやりとした画像しか得られません(図7マウス,10マウス)。CTと併用したPET-CTも利用されます。大腸癌では再発や転移の部位を確認するときに主にもちいられます。

2006年3月に国立がんセンターが発表したデータでは、大腸癌患者のわずか13%しか、PETでは検出できませんでした。患者さんそれぞれ、役に立つ場合もあればあまり役に立たない場合もあります。

癌検診としてつかわれることがありますが、最初から大腸癌をうたがうときには内視鏡が簡単で確実、かつ安価です。たいへん高額な検査(自費で100.000円以上がふつう)だけに、じゅうぶん納得してから受けましょう。

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