大腸癌の化学療法は近年、長足の進歩を遂げています。ここでは、新しい化学療法について解説します。
ただし、2006年現在の最新治療ですので、初回治療はそれぞれの地域での中核病院で、入院して行われています。
むかしから、大腸癌化学治療の中心的役割を果たしてきました。増感剤としてのロイコボリン(LV)を併用する方法、持続して静脈内投与する方法、経口で投与する方法など工夫がなされてきました。
飲み薬であるUFTとLVを併用する方法や、カペシタミン(商品名ゼローダ=2006年現在、大腸癌での保険承認なし)やTS1も有効性が認められています。
単剤で用いて11-29%の有効性が報告され、2004年頃までは「再発大腸癌には、まず5FU+LVを使い、それがきかなければCPT-11」という位置づけ(second line)でした。
その後はCPT-11と5FU+LVの併用療法が注目を浴びました。代表的な併用療法(FOLFIRI)を図1,図2,図3に示します。次に記すFOLFOXと並んで、現在の大腸癌化学療法の基本です。
オキサリプラチンは白金製剤(代表はシスプラチンで、大腸癌では5FU+LVの前によく使われていました)のひとつです。この薬は単独でつかってもあまり効果は期待できないですが、5FU+LVと併用すると奏功率が上がります。
ただし、末梢神経障害が90%前後の確率でおこるため、神経毒性の軽減が課題です。現在の代表的な投与法のひとつ(FOLFOX6)を図4,図5,図6に示します。2006年現在のfirst lineです。
本邦ではまだ保険適応がなく治験中ですが、欧米ではスタンダードな治療となりつつあります。ただし、たいへん高価な薬であること、腫瘍の縮小効果や生命予後を疑問視する報告もあります。現状は決して夢の特効薬ではありませんが、今後の発展がおおいに期待されます。。
大腸癌で検討されている分子標的治療薬には、抗上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor = EGFR)抗体と抗血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor = VEGF)抗体があります。
EGFは、古くから知られている細胞増殖因子で、癌細胞表面の受容体(EGFR)に結合して、大腸癌の増殖を促進します。いっぽう、現在注目を浴びているVEGFは腫瘍周囲の血管新生を促進し、間接的に腫瘍の増大をきたします(図7)。
Bevacizumab(商品名 アバスチン)は抗VEGF-A抗体で、血液中のVEGFへ結合することでVEGFの受容体への結合をふせぎます(図7)。癌周囲の血管を整理し、腫瘍血管を減らすとともに、抗癌剤が局所へいきわたりやすくなる、と考えられています。
単剤では効果がなく、5FU+LVやFOLFIRI、FOLFOXに組みあわせて使われます。アメリカでは切除不可能な大腸癌では最初に使われる化学療法(first line)です。
Cetuximub(商品名 アービタックス)はEGFRをブロックする薬で、肺ガンで使われるイレッサの親戚です。アメリカではsecond line以下の位置づけです(図8)。