肛門疾患のなかで、最も多いのが痔核(じかく)、いわゆる「イボ痔」です。痔核は、肛門部の粘膜皮膚の下にある静脈がこぶのように腫れた状態をさします。
歯状腺より腸側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核と呼びます。痔瘻(じろう)や裂肛(れっこう)は男女で差がありますが、内痔核には性差がありません。
内痔核は初期には痛み、腫れ、出血とも軽度です(図1,図2)。はれは1度の段階では中にとどまっているので、肛門は腫れません。内痔核のできる歯状線より奥は、本来は痛みについては鈍感な場所ですから、ほとんど痛みもありません。出血は固い便が出たときや、下痢が続いたときに紙につく程度、少量みられるだけです。
ただし、このような症状は大腸癌などでもよくある症状です。とくに痛みがないのに便に赤黒い血が混じる、便の習慣が変わってきた、といった症状があればかならず専門医の診察をうけてください。
内痔核がひどくなると、それぞれの症状が悪くなります(図3,図4)。腫れがひどくなるにつれ、肛門管の外へ飛び出す時間がながくなれば、血の巡りがわるくなってさらに腫れがひどくなり、立ったり重いものをもつだけで自然に飛び出すようになります。
肛門部の腫れが歯状線の外までおよんだり、脱肛の状態がつづくと痛みが強くなります。さらに外へ飛び出す時間が長いと、肛門部の清潔をたもつのがむずかしくなり、肛門部がかゆくなることも多くなります。
出血も典型的には、排便後に便器が真っ赤になります。この状態を放置していると貧血になり、外来に見えたときにはフラフラで、手術するために輸血を考えることすらあります。
内痔核は良性の病気で、癌とは違い 急いで手術をしなければならない、という病気ではないのですが、このような貧血をきたす場合は例外で、急いで手術を考える必要があります。
内痔核はその腫れ方の程度により、4つに分類されます(1−4度で、数字が大きくなると悪くなります 図5)。
1度は肛門管内にとどまっている段階、2度は腫れが強くなり、排便時に外へ脱出するが自然にまたもとへ戻る段階。3度になると排便時にいったん飛び出すと、指で押し戻さないと腫れが引かない段階。この腫れがさらにひどくなると、飛び出したままで押し戻すことができない段階(脱肛)、4度となります。
治療方針を考える上で、1度は保存的療法(くすりだけ)、4度は手術をしないと治らない、その間の2,3度についてはケースバイケースと思ってください。