大腸ポリープの80%が腺腫(せんしゅ)です。診断は大腸内視鏡で組織をとって確定します。大腸腺腫は現在は良性ですが、将来癌に変わる可能性があるので切除が必要です。
大腸では腺腫の一部から癌に変わっていくことが多いので、胃のようにポリープの一部の組織をとって良性なら放置する、ということはしません。まずはポリープ全部をとって、その中に癌に変わっている個所がないかどうか、確認する必要があるからです。
腺腫から癌に変わるメカニズム(adenoma carcinoma sequence)については、大腸癌の章で説明していますので、参照してください(図1)。
組織型により腺管腺腫(せんかんせんしゅ)、腺管絨毛腺腫、絨毛腺腫(じゅうもうせんしゅ)に分類されます。組織の型により、ポリープの形や癌になる確率は多少変わりますが、切除が必要です。ほとんどのポリープは工夫すれば内視鏡でとれます。
亜有茎性のポリープでクビが短いものを代表としてあげます。まず、内視鏡でポリープを発見したら、充分に観察し表面のかたちから、腫瘍性ポリープかどうか、判断します。つぎに、腫瘍性で切除すべき、と思われれば、癌の可能性がどれほどあるか、仮に癌であればどの深さまでガン細胞が入っているか、を判断します(図2)。
良性の腺腫だと判断すれば、まずポリープの茎に内視鏡を通してワナをかけます(図3)。ちょうど、カゥボーイの投げ縄の要領でポリープのクビをしめていき、ちょうど良い高さで通電し、焼き切ります(図4)。とったポリープは顕微鏡の検査に供するため、鉗子でつまみ回収します。
切除した腸管の出血の程度、出来た潰瘍の大きさと深さを判断します(図5)。問題がない、と判断すればそのまま内視鏡を抜き取ります。腸管の粘膜側は痛みを感じる神経に乏しいので、これらの過程で痛みを感じることは、まずありません。
なお、ポリープが小さくて平坦なときは、直接ポリープをつまみ上げ、通電してポリープを照灼するホットパイオプシーも選択します(図6)。
最近は平坦で幅広い病変について、内視鏡で粘膜下層を剥離して一括して病変を切除する方法が注目されています(ESD)。大腸がんの内視鏡治療の項を参照してください。
大腸粘膜を電気メスで焼いてとっていますので、やはり手術を受けたのと同じで注意が必要です。確率は非常に低いですが、このポリープ切除術でとくに用心する合併症は、後出血と穿孔です。とくに大きなポリープをとった後は、血がでていないかどうか、潰瘍が深くないかどうか、のチェックが肝心ですが、切除後1,2週間たってあらわれることもあります。
ほとんどはとったすぐ後におきます。便に赤い(赤黒い)血が混じります。ほとんどはこの出血は自然に収まりますが、まれに多量に出血して急いで内視鏡下に止血しなければなりません。まれに、1,2週間たってから出血することもあります。
茎の太いポリープを取った後などは特におこりやすいので、予防する手だてとして、ポリープ切除前にあらかじめ、留置用のスネア(わな)をポリープのクビにかけてから、切除することもあります(図7)。また、ポリープを取った後に、切れ端に血管がでているときなどは、止血用のクリップで断端をはさみます(図8)。広基性(裾のひろい)のポリープを切除した後に広い潰瘍が出来たときに、その縁をクリップで少しずつ閉鎖したりもします。
内視鏡処置での穿孔のほとんどは、ポリープを取った瞬間におきます。急に激しい腹痛を感じ、出血します。直ちに外科医に連絡をして入院の上絶食にし、抗生物質で経過観察をするか(術前の腸管洗浄が満点でかつ、穿孔部が非常に小さくクリップで閉鎖できた時)、ただちに開腹手術をするか、判断が求められます。
これを予防するための手だてとして、ポリープを切除する前に、ポリープの根に生理食塩水を注入する方法があります(図9)。大腸壁がみかけ厚くなり腸管損傷がふせげるだけでなく、ポリープが浅いか深いかを判断する材料にもなります(深いものを取らなければ、穿孔の可能性もぐっと減るわけです)。
明らかに癌の合併を疑う大きなポリープ、深いところまで入っているポリープ、広基性(根本が広く茎が短い)の大きな扁平なポリープ、大きなポリープが多発している例では、内視鏡で無理に取るよりも手術を選択するときもあります。
病変の部位で手術の方法もいろいろですが、肛門にごく近い場合は肛門を広げて(特殊な器械をもちいることもあります)切除します。肛門から距離があるときは、開腹手術でおこなうのがふつうです。最近は腹腔鏡を利用して腸管の剥離を行い、腸をつなぐときだけ小切開で手術をすることも増えています。