大腸癌は胃や肝臓などその他の消化器癌とくらべると治りやすい癌です。また、大腸癌の診断、治療は近年急速に進歩しています。
大腸癌の治療でもっとも効果が期待できるのは外科手術です。まずは標準的な結腸癌の外科治療について、解説しましょう。
癌は発育するとリンパ節に転移しますので、癌の周辺で転移する可能性があるリンパ節を腸といっしょに切除します(リンパ節郭清=かくせい)。いっぽう、良性では問題になる個所の腸管だけを切除します。良性の大腸疾患と悪性の大腸癌では、同じ長さの腸を切除してもその内容は大きく違います(図1)。
癌がどれだけ進んでいるかで、転移するリンパ節の範囲が変わりますので、過不足のない範囲を切除します。全体のバランスをとることが重要で、たとえば遠隔転移があるときにはリンパ節をたくさん郭清することはありません。
基本的には結腸癌の手術では切除した後の腸と腸をつなぎます(図2a)。ただし、癌がもとで腸閉塞を起こしたり、腸に穴が開いて腹膜炎になったりしているときには救命を第一に考えて、肛門側の断端は閉じ口側の腸管を人工肛門としてお腹の上にだすことがあります(図2b)。
結腸癌を切除するためにはいろいろな皮膚切開があります。代表的な切開法を示します(図3)。
近年は早期癌については腹腔鏡補助下大腸切除術をおこないます。これは腹腔鏡で見ながら大腸を剥離して血管を処理するものです。
上行結腸と下行結腸は後腹膜にくっつき、横行結腸には脂肪の膜(大網=たいもう)がついています。ですから、大腸を切除するためには、まずは大腸の周囲をはがして(剥離=はくり)腸をブラブラにします(図4)。
腸を切除する長さは、癌から5cm以上10cm未満の距離をとります。
リンパは動脈にそって逆向きに流れています。リンパ節郭清とはどの動脈を処理するか、ということです(図5)。代表的な手術と処理をする動脈をしめします(図6)。
結腸と結腸のつなぐ向きには、腸の端と端をつなぐ方法と横と横をつなぐ方法があります。もちろん、生理的には端端吻合が自然です(図7)。
また、むかしは針と吸収糸をつかって手で縫っていましたが、最近は「腸と腸をつなぐカッター付きホッチキス」を使う器械吻合が主になっています(図8)。
器械吻合の利点としては
があげられます。血流と吻合部の緊張に注意すれば、いずれも安全で合併症が非常に少ない吻合です。