ここでは大腸の解剖、働きなどにつき解説します。専門用語も多いですが、他項(直腸癌の章など)をよんでいてわかりにくければ、参照してください。
大腸はおなかの右下よりはじまり、時計回りでグルリと一周し、肛門につながります(図1)。大腸は伸び縮みしますが、内視鏡では肛門より70cmほどで盲腸部に到達します。
大腸には部位により図2のように、1.盲腸(もうちょう) 2.上行結腸(じょうこうけっちょう) 3.横行結腸(おうこうー) 4.下行結腸(かこうー)5.S状結腸(えすじょうー) 6. 直腸(ちょくちょう) とよびます。7. 虫垂(ちゅうすい)は盲腸の先にのびた細長い袋です。上行結腸と下行結腸は後腹膜に固定され、横行結腸、S状結腸はブラブラしています。
大腸の壁は5枚の層からできています(図3)。腸の内側から、1.粘膜 2.粘膜下組織 3.固有筋層 4.漿膜下層 5.漿膜(しょうまく)です。ただし、大腸の終わり、直腸の下部は腹膜より外になり、この場所に漿膜はなく 外膜といいます。
図4にしめすように、大腸の右半分は上腸管膜動脈(SMA 図5a)、左半分から直腸上部までは下腸管膜動脈(IMA 図5b)から栄養をえています。直腸下部では内腸骨動脈からおもに枝が出ます(図5c)。下行結腸は上、下腸管膜動脈の境(Griffith point 図5円印)にあたり、ここでの血管の発育が悪いことが虚血性大腸炎好発の原因とされています。同じように、S状結腸と直腸の境も虚血性大腸炎がよくおきる部位です。
静脈は動脈とは別で、右半分は上腸間膜静脈、左半分から直腸上部までは下腸管膜静脈から脾静脈をへて門脈にはいり、肝臓をへて心臓へ戻ります(図6)。直腸下部は内腸骨静脈から直接心臓へ戻ります(図7)。大腸癌が血の流れにのって最初に転移する(血行転移)部位が、結腸癌は肝臓で下部直腸癌は肺なのはこのためです。
リンパ管は動脈に沿って逆方向、つまり腸管側から大動脈へむかって流れます。このリンパ流にのって癌がひろがることをリンパ行性転移と呼びます。
結腸のリンパ流が単純なのにくらべ、直腸でのリンパ流は、上部は上直腸動脈から上腸間膜動脈へ、中部では中直腸動脈から内腸骨動脈へ、下部では骨盤奥を横断して内腸骨動脈へ、と複雑に入り組んでいます。
大腸内にはたくさんの細菌がいますので、この細菌の酵素により消化された栄養分を多少は吸収できます。しかし、栄養を吸収するのは主に小腸の役割で、大腸では水分の吸収が主となります。
また、重金属の排泄や、小児のころは(特に盲腸、虫垂は)免疫にも関わっています。もちろん一番大事なのは、腸内容を肛門まで運搬する、運動能ですが。