この頁で扱うのは粘膜より発生した腫瘍ではなく、厳密にいえば「大腸ポリープ」ではありません。
カルチノイドは消化管、気管に好発する上皮由来の腫瘍です。大腸ではとくに直腸に多く、粘膜下腫瘍の形を取ります。大きなものは転移するので、悪性腫瘍と考えられます。
胃や小腸では顔面紅潮、下痢、喘息などカルチノイド症候群(図1)と呼ばれる症状がでることもありますが、大腸では症状はほとんどありません。腫瘍が大きくなり表面に潰瘍ができると、血便になります。診断は他の症状で大腸内視鏡をうけて、偶然発見される場合がほとんどです。
立ち上がりのなだらかな、ときにくびれを持つツルリとした隆起で、表面は黄色で血管がめだつのが典型例です(図2)。腫瘍径が2cm以上で表面が結節状でびらん、潰瘍を伴う場合は悪性のカルチノイドです(図3)。
良性は内視鏡切除、悪性は外科手術が原則です(図4)。内視鏡で良性が明らかなときは、粘膜切除術を行います。ただし、1cm以下でも切った断面にカルチノイド細胞が残ることがありますので、顕微鏡検査の結果により、再発がないかどうか、注意深く内視鏡を定期的にうける必要があります。
1cm以上2cm以下のカルチノイドは筋層まで入っていることも多いので、外科手術で局所切除をすべきでしょう。切除後の病理検査が重要なのはいうまでもありません。2cmをこえたものは、大腸癌と同じように根治手術をします。
大腸粘膜の下から発生した腫瘍です。そのほとんどは良性ですが、まれに悪性化することもあり注意が必要です。小さな腫瘍は無症状ですが、大きくなると腹痛や下血、便線細小など伴うようになります。小腸とくらべると、大腸は粘膜下腫瘍が少ないです。ここでは代表的な粘膜下腫瘍につき説明します。
ことばのとおり、腸壁の脂肪組織からできた腫瘍(図5)です。大腸の内腔へとびだすものが多いですが、ときに大腸の漿膜側よりでて大腸の外へとびだすものもあります。腹痛やときに腹部腫瘤できづかれるときもありますが、多くは内視鏡検査で偶然発見されます。
診断は内視鏡で粘膜正常の柔らかな腫瘍で薄黄色あるいは黄色になり、鉗子でおすとちょうどクッションを押したようにペコリとへこみます(cushion sign)。小さなものは経過を見るだけで十分です。
大腸の壁の中の平滑筋から出てくる腫瘍です(図6)。小さなものは良性ですが、大きなものや表面に潰瘍をともなうと「悪性の」平滑筋腫、すなわち平滑筋肉腫が疑われます。
脂肪腫と違い、大腸壁の外側へ育つものが多く、腹部腫瘤や下血で見つかることもあります。内視鏡で「粘膜の下の非常に固そうな腫瘍」という印象です。ときに悪性化することもあります(平滑筋肉腫)。
大腸粘膜の下のリンパ管が嚢胞状に拡張したもので、大腸ではまれです。内視鏡では白色の透明感のある豹変のスムーズなしこり(図7)で、腫瘍が大きくならないと無症状のままです。針で突くとリンパ液が出てきて縮小することがあります。
直腸によくできる粘膜下腫瘍で、内視鏡で見ると、カルチノイド腫瘍や腺腫に似ています(図8)。95%は直腸下部にできます。同じリンパ腫でも、悪性リンパ腫はまったく別物です。
腸壁の中にある神経成分から出来る腫瘍で、これも大腸では稀な病気です。体の他に出来る神経腫瘍と同じく、白く固いもので良性です。
赤いスポットから、ポリープ状のものまで様々な形と大きさで見つかります(図9)。小さなものでも、ときに大出血の原因になりえます。
原因不明の大量下血があったときに内視鏡検査でみつかることがあります。
正確に言えば粘膜下腫瘍ではありませんが、内視鏡では上の脂肪腫や、リンパ管腫に似ています。大腸の壁内に風船のように空気がたまっている状態で、S状結腸や上行結腸に多発します。
下にたまっているのは脂肪やリンパ液でなく気体ですから、脂肪腫でのcushion signがさらに明らかです(図10)。
適切な日本語訳がありませんが、大腸粘膜直下の血管がクモ状血管腫のように拡張している状態です。盛り上がることは少なく、ほとんどは平坦な病変です(図11)。
さきの血管腫と同じで、小さなものでも突然の大量下血の原因になります。