ベーチェット病は厚生労働省の特定疾患のひとつで、本邦に特に多い原因不明の病気です。粘膜、眼、皮膚が中心におかされ、炎症発作をくり返します(図1)。
口腔内のアフタ(口内炎)、眼のぶどう膜炎、皮膚症状(結節性紅斑など)、外陰部潰瘍を主症状とします。これらに加えて副症状として腸に潰瘍を形成したものを腸管ベーチェット病とよびます。
いまだ詳細不明ですが、複数の遺伝子異常がひとつの原因とされています。
初発症状として重要です。ほぼ必発し、口唇粘膜、頬粘膜に境界のはっきりした潰瘍ができます(図2)。いったん良くなっても、再発を繰り返すことが特徴です。増悪時には高熱がよく現れます。
両眼にぶどう膜炎をきたします(図3)。前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)や後部ぶどう膜炎(網膜脈絡膜炎)により視力低下を認め、ときに失明します。
結節性紅斑、皮下の血栓性静脈炎や座瘡(ニキビ)に似た皮膚症状が見られます(図4左)。
境界のはっきりしたアフタ性潰瘍が陰嚢や大小陰唇にあらわれます(図4右)。
これに加えて、腸管に病変を来したものを腸管ベーチェット病(図5)とよんでいます。おもに回盲部に境界鮮明な潰瘍を形成し、このため腹痛、下痢、下血をきたします。潰瘍が深くなると、大網をまきこんで右下腹部にしこりふれます(図6)。
腸管ベーチェット病は副症状であり、主症状が揃った例では疑診されます。ただし、腸管ベーチェットでも主症状がすべて揃ったもの(完全型)は少ないですが。
確定診断には大腸内視鏡が必要で、回盲部におおきな多発性潰瘍を認めます。潰瘍は深く下掘れし、打ち抜き病変=punched out lesionとよばれます(図7)。腸管リンパ節が潰瘍形成にともない、炎症をおこして腫大し、超音波でも確認されます。
原因不明なため、対症療法が主です。ストレスを避け心身の安静を保つこと、消化の良い食事をすることが大事です。
炎症がつよいときには抗生物質やステロイド、免疫抑制剤の投与がおこなわれます。潰瘍穿孔した場合は、緊急手術の対象です。
回盲部に好発する原因不明の打ち抜き潰瘍で、組織像はちょうど腸管ベーチェットの潰瘍に同じ非特異的炎症です。多くは単発性ですが、ときに多発します。
腸管ベーチェットの一つの亜型かどうか、なお意見が分かれています。