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大腸炎9 粘膜脱症候群 急性出血性直腸潰瘍

本文中の図の解説方法
  1. 粘膜脱症候群 成因
  2. 粘膜脱症候群 症状
  3. 潰瘍型
  4. 隆起型
  5. 粘膜脱症候群 診断
  6. 深在性嚢胞性大腸炎 成因
  7. 深在性嚢胞性大腸炎 直腸癌術後
  8. 急性出血性直腸潰瘍

下血の原因となる直腸潰瘍で、原因となる基礎疾患があります。

粘膜脱症候群 MPS

従来、孤立性直腸潰瘍といわれていた疾患群ですが、多発したり潰瘍形成がないものもあるので、現在は粘膜脱症候群(ねんまくだつしょうこうぐん Mucosal Prolapse Syndrome=MPS 図1マウス)とよばれています。

潰瘍を形成するものの中には直腸癌と紛らわしい形態を取るものもあります。その昔は組織診断がつかないまま、癌とまちがって直腸切断術がされた例もありましたが、疾患の概念が広まった今では、そのような誤診は非常に少なくなっています。

原因

直腸の慢性炎症ですが、そのもとになるのは便秘で排便時に過度にいきむことです(図2マウス)。直腸粘膜の下降脱出が反復され、粘膜の過形成がおこり隆起型MPSとなります。また、粘膜の血流が悪くなると、潰瘍型MPSとなります。いずれも直腸の前壁側を中心にできる傾向があります。

症状

40代までの女性に多い病気です。基礎に便秘があり、排便時に必要以上に長時間いきむ習慣があります。排便時の出血や肛門部痛、粘液便をきたします。

分類

潰瘍型(図3マウス)と隆起型(図4マウス)にわけられます。

潰瘍型

潰瘍辺縁は白くわずかに隆起し、潰瘍は底が浅く種々の形になります。平坦型(色変わりだけで明らかな潰瘍をともなわないもの)も潰瘍型の早い段階と思われます。

隆起型

粘膜が発赤しポリープ状になることもあります。さまざまな隆起の型を取り、隆起と潰瘍が混在します。

診断

診断は大腸内視鏡によります(図5マウス)。生検では、上皮の過形成と間質の線維芽細胞や平滑筋線維が粘膜へ増生する特異な所見があります。

治療

手術は不要で、便秘の治療をおこないます。

深在性嚢胞性大腸炎 CCP

下部直腸の粘液腺の出口がふさがり、腺の内部へ粘液が貯留し充満した結果、嚢胞状に拡張することがあります。これを深在性嚢胞性大腸炎(しんざいせいのうほうせいだいちょうえん colitis cystica profunda=CCP 図6マウス)とよびます。限局したものは粘膜脱症候群の一亜型と考えられています。

直腸癌の手術では自動吻合器を二つ使って腸をつなぎます(低位前方切除術)。このときに術後に吻合部周囲の粘膜下に粘液がたまることがあります(図7マウス)が、これと同じ機序です。

急性出血性直腸潰瘍

重篤な基礎疾患を有する高齢者におきる下部直腸に限局した潰瘍です。痛みがない大量の新鮮下血でみつかります。

原因

基礎疾患の脳血管障害、心不全、糖尿病、血液疾患、悪性腫瘍などにともなうストレス潰瘍が疑われますが、詳細は不明です(図8マウス)。

診断と治療

直腸内視鏡を緊急で施行します。下部直腸に境界の明らかな浅い潰瘍ができ、潰瘍の底に露出した血管から出血を確認できることがあります。

基礎疾患のため手術は不可能なことが多く、輸血しながら保存的に加療します。明らかな出血源がわかれば吸収性局所止血剤やガーゼでの圧迫をまず試み、止血できないときは血管硬化剤の局注やヒートプローブによる止血術をおこないます。

 
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