腸結核はMycobacterium tuberculosisによる腸感染症です。口から入った結核菌が直接に腸に病巣を作るときは、原発性腸結核といいます(図1)。
しかし、肺など多臓器の結核病巣から2次的に発症することが多く、喀痰の結核菌を飲み込んで感染するとき、あるいは血流にのった菌が腸へ定着するときがあります(図2)。肺結核患者に腹部症状があらわれたときに本症を疑います。
腹痛、発熱、食欲不振、体重減少、下痢などが主症状です(図3)。自覚症状のない肺結核患者が、便検査などで偶然発見されることも多いです。
まれですが腸結核の合併症として、腸閉塞、腸穿孔、吸収不良が知られています。腸閉塞はしこりができるためでなく、結核性腹膜炎により腸が屈曲するためです。
肺結核が高齢者に多いのと異なり、30代から40代と比較的若い患者さん(女性に多い)に好発します。
大腸内視鏡にて回盲部に輪状潰瘍(図4)をみとめ、生検で乾酪性肉芽腫や抗酸菌が同定されると、腸結核と診断されます(図5)。生検組織の抗酸菌培養も必要です。
回盲部が好発部位で、不整小潰瘍が多発して輪状となります(輪状潰瘍とは腸の長軸に対して垂直の方向にできるものです 図6)。
さらに進むと地図状となりますが、潰瘍と潰瘍の間の粘膜は正常に見えます。
治癒期になれば潰瘍部が瘢痕化し、回盲弁が変形して壊れます(図7)。炎症性ポリープや腸管の短縮も高率に認めます。
潰瘍の瘢痕にともない、腸管の短縮、ハウストラの消失、狭窄、憩室様変化などが認められます。
抗結核薬による化学療法が中心です。活動性潰瘍があっても(肺結核とことなり)、4週間の化学療法だけで内視鏡でもバリウム像でも改善傾向が現れます。ただし、多くは肺病変をともないますので、こちらが治療のエンドポイントとなります。
化学療法はひとつでなく、複数の薬を組み合わせて使います。使用される薬は、イソニアジドとリファンピシンの2者併用が多く、それにストレプトマイシンやエタンブトールなどを組み合わせます。副作用に肝臓障害、腎障害、聴力障害、めまいなどがあります。
おもな病巣が右側結腸で内腔が広いため、瘢痕や変形がかなり強くても狭窄になりません。そのため外科手術の対象になることは稀です。
ただし、腸結核がすすむと結核性腹膜炎をきたします。小腸大腸の表面に小結節が生じ、繊維性の癒着をおこして腸閉塞になることがあります。