大腸に多発してポリープが出来るものを大腸ポリポーシスとよびます。その多くは遺伝性疾患です。診断には遺伝子異常の確認は有用ですが、保険外診療になるので限られた施設でしか行えません。
(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう Familial Adenomatous Polyposis: FAP)
大腸に100個以上も多発して腺腫ができ、若いうちに大腸癌にかわります(図1)。腺腫は欧米を中心として前癌病変と考えられており、放置すると遺伝子変異がつみかさなることにより、大腸癌となります(adenoma carcinoma sequence 図2)。ときに胃や十二指腸にもポリープが多発することもあり、こちらも癌化することもあります。
第5染色体にある遺伝子(APC)の異常でおき、常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせい)です。一対あるAPC遺伝子の両方に変異がおきることで、発ガンへのスタートが始まるとされていますが、FAPの患者さんは一対の(2つある)遺伝子のうち一つが、生まれてきたときにすでに変異がおきているので、若いうちに癌ができる、と考えられています(2ヒット説 図3)。
発ガンの可能性が高く、腺腫の数が膨大ですから、予防的に手術で大腸を切除します。直腸を温存するときは、残った直腸に癌ができないかどうか、内視鏡で定期的に観察しなければなりません。
いずれもFAPの一亜型で軟部腫瘍や骨腫をともなうものをガードナー症候群(図4上)、中枢神経系の腫瘍をともなうものをタルコー症候群(図4下)とよびます。
食道をのぞく消化管全体に過誤腫性ポリープが多発する遺伝病で、常染色体優性遺伝です。FAPと違って、大腸以外にもポリープができ、口唇や粘膜に色素沈着をきたすのが特徴です(図5)。小腸にできたポリープにより、腸重積をおこし移動する腹部腫瘤や腹痛などの症状がでます。
臨床では、口や手足の先の色素沈着で気がつくことがあります。この病気を疑い、胃や腸の検査をすることで診断がつきます。小さなポリープは放置しても良いですが、径のせまい小腸でこのポリープが大きくなると、たびたび腸重積(右図6)をおこし緊急手術になります。定期的に診察を受け、大きなポリープは内視鏡で切除します。
なお、唇まわりの色素沈着が美容上に問題になるときは、レーザーで治療します(皮膚科あるいは形成外科で診療されます)。