肛門搔痒症(こうもんそうようしょう)は言葉のとおり、肛門の周囲が痒い状態です。こちらは性感染症とは関連が薄く、肛門周囲の皮膚炎なので、肛門科以外では皮膚科でも診療します。
コンジローマは肛門皮膚周囲に小さなしこりが多発する病気で、尖圭コンジローマと扁平コンジローマがあります。いずれも性感染症とされ、パートナーの治療も必要となることがあります。
肛門搔痒症(こうもんそうようしょう)とは肛門の周囲が痒くなる疾患で、肛門周囲湿疹ともいいます(図1)。
原因ははっきりしないことが多いですが、白癬菌などカビが関連していることもあります。カビの有無は皮膚科で皮膚の一部を採取し、顕微鏡検査を受ければわかります。他の肛門疾患(内痔核、肛門狭窄)も原因になります。
痒いので肛門が不潔では?と考え、石鹸で肛門をゴシゴシとこすることも症状を悪くします。
症状は肛門周囲のかゆみです。程度はさまざまですが、入浴後や夜間に増悪します。慢性化すると、肛門周囲の皮膚やシワが白く肥厚します(図2)。
白癬菌が原因の時は抗白癬菌治療で治ります。それ以外は、弱いステロイド外用薬で症状をおさえます。皮垂や肛門疾患が原因と考えられるときには、手術します。
日常生活で大事なのは、あまり神経質にならないことです。とくに、必要以上に肛門のまわりを石鹸で洗ったり、シャワートイレで洗いすぎると悪くなります。症状がつよいときは、お湯だけで軽く流すだけにします。かゆみ止めのクスリや抗不安薬の服用も有用です。
尖圭(せんけい)コンジローマはヒトパピローマウイルスの感染で生じます。上述したように性行為等が感染の原因ですが その経路が不明なことも少なくありません。
肛門周囲皮膚や肛門内に2ミリ前後の小さく柔らかいしこりがカリフラワー状に多発し、ひどくなると肛門周囲がビッシリと埋めつくされます(図3)。また、陰嚢、陰茎や陰唇などの外性器にも同じようなしこりができます。
性感染症でもホモセクシャルの人に多い病気ですので、診療と平行してHIV抗体検査もうけておくべきです。今後の治療方針にも大きく影響します。診察時にカミングアウトしましょう。
治療としては従来より、切除療法と凍結療法が行われています(図4)。本来はウイルス感染症ですので、1回だけの治療では完治しないこともあります。肛門科以外では外科、皮膚科でも(女性は婦人科でも)診療をします。
外科、肛門科では切除療法をおこないます。腰椎麻酔、仙骨硬膜外麻酔でしこりをひとつずつハサミで切除します。範囲の広いものはできるだけ肛門皮膚を残すよう切除し、瘢痕が少ないように電気メスの使用を少なくします。
皮膚科では小さなコンジローマは液体窒素で冷凍し縮小させます(尋常性疣贅=ふつうのイボの治療とおなじ)。大きなコンジローマは冷凍療法では治らないので、まずは外科治療を優先します。
尖圭コンジローマ治療のトピックスとして、近年は塗り薬であるベセルナクリームによる治療も行えるようになりました。ただし、肛門粘膜には使用できませんので 病変が肛門外のみの場合に限られます。2013年現在、まだまだ評価の定まっていない治療法で その奏功率もおよそ3人に1人は効きませんので、根治を目指すには 切除や凍結療法を先行するほうが無難かも知れません。
扁平(へんぺい)コンジローマは梅毒の2期にみられる肛門周辺の扁平隆起です(図5)。尖圭コンジローマがカリフラワー状なのに対して、表面がつるりとしています。
診断は泌尿器科とも協力し、血清検査などで確定します(図6)。治療は原疾患である梅毒の治療、すなわち抗生物質の投与です。梅毒は全身性疾患ですから、通常は外科治療の対象になりません。内科、泌尿器科、感染症科などでも治療できます。