裂肛の治療は急性か慢性か、で大きく異なります。したがって、病期の判断が重要です。
裂肛も急性期は大変痛んでつらいですが、手術は必要ありません。保存的に治療すれば自然に治ります(図1)。
肛門科では、肛門の痛みを取るために消炎鎮痛剤や坐薬、軟膏を出します。坐薬、軟膏は本来の消炎作用だけでなく、便の滑りをよくする効果も期待できます。また便が固くなって裂けるわけですから、便が軟らかくなる緩下剤を投与します。
しかし、クスリよりも重要なのは、食生活や排便習慣の改善です。一般的な注意は他の肛門疾患と同様ですので、内痔核2のページを参照してください。
潰瘍が慢性化して深くなり、同時に肛門がせまくなってくると、排便後ひどいときは半日も痛みに苦しむようになります。また、肛門ポリープが腫大し排便するたびにとびだしたり痛んだりするとき、また皮垂が大きくなって痒みがひどいときも手術すべきでしょう。
仙骨麻酔あるいは低位腰椎麻酔のもと、肛門を拡張し括約筋の緊張を取る方法(図3)で、慢性期だけでなく急性期の激しい痛みをとるにも有用です。おしりに創もできず、日帰り外来手術で行います。
LSIS=内括約筋側方切開術は括約筋の緊張がつよく、たびたび裂肛を繰り返すときによく用います。日帰り手術のよい適応です。
やることは単純で、3時か9時の方向で、内括約筋の下部を一部だけメスで切断するだけです(図4)。肛門の横にメスを入れ、括約筋を露出して切る方法と直接に見ず切る方法とあります。肛門ポリープなどあれば、これも切除します。
SSG=肛門部皮膚弁術式は、すでに肛門部の狭窄がすすんでいる症例でよくおこなわれます。従来は1週間の入院がふつうでしたが、日帰り手術でおこなう施設もふえています。
まず潰瘍やポリープ、皮垂などの肛門病変を切除します。そのあと、露出した内括約筋を数カ所切って肛門ののびを良くし、それから肛門粘膜と皮膚を縫合します(図5)。
ここで肛門潰瘍を縦に切除した創を横に縫うと、肛門の太さが広がります。ただ、このままでは縫ったところがつっぱって痛いので、皮膚を薄く切って滑らす(Sliding Skin Graft)わけです。
上記の手術では括約筋は切離するが一部のみなので、術後の排便障害はほとんどおこらず、創部の感染や浮腫がときにおこるのみです。